無痛鎮静法による麻酔は、精神安定薬を注射して「意識はあるけれど眠い状態」で歯科治療や口腔外科手術を受けていただくとても安全な麻酔です。
全身麻酔のような危険や入院が必要なく、手術後すぐに意識が回復するため、30分程度で帰宅していただけます。
また、強い嘔吐反射や歯科治療、手術に対する緊張や恐怖心のために歯科治療が受けられない方にとても有効で、血圧や心電図、呼吸状態を絶えず見守りながら必要に応じてその治療を行いますので、高血圧などの病気をお持ちの方も安心して治療を受けていただけます。
当センターでは無痛鎮静法の薬剤を局所麻酔と混ぜて歯肉に注射する、口腔内鎮静法を採用しております。
この方法の特徴は通常行われる静脈内鎮静法にくらべ腕に注射や点滴をする必要がありません。 なんら特別なことをせずにリラックスして手術を受けていただけます。
痛みや腫れを少なくするためには手術の方法も重要です。
その方法は単純でなるべく傷口が小さくなればよいのです。
今、一般の医科の手術でも様々な病気でお腹を切る開腹手術から内視鏡を使用した手術に 変わってきていることは皆さまご存じのことと思います。
内視鏡手術は術後の痛みが少なく社会復帰も早いという特徴がありますが、反面高度な技術が要求されます。
インプラント手術も切開を加えない方法がありますそれは「フラップレス手術」とよばれる方法です。
正確にはインプラントが入るぎりぎりの穴のみをあけてインプラントを骨に固定します。
フラップレス手術
骨の幅が十分にある方ですので、フラップレスでインプラントの埋入を行います。
(もちろん事前にCTスキャンで骨の幅は確認しています)
ガイドピンの挿入
歯肉パンチでインプラントの直径分の歯肉を切り取り、ガイドピンを挿入しCTスキャンで方向を確認します。
CTスキャンで方向の確認
ガイドピンを挿入した状態でCT撮影を行い方向を確認します。
この症例では方向は良さそうなのでこの方向でドリルしていきます。
術後にCTで確認
術後はもう一度CT撮影を行いインプラントの埋入方向や深さの最終チェックを行い手術は終了です。
インプラントが埋入された
歯肉はこれだけしか切らないので痛く無く、腫れないインプラント手術が実現できました。CTスキャンが無いと骨の形態が把握できません。天川歯科クリニックではインハウスCT(院内設置)により、術中にCTがとれますから安全にインプラントの手術が行えます。また、このフラップレスの術式を数十例行いましたが、いまだ痛みや腫れを訴えた患者さんはおりませんので、できるだけこの方法で行うようにしております。
当クリニックでは術後の痛みに対応するために「先制鎮痛」を積極的に取り入れています。
先制鎮痛とは
「痛みの原因となる刺激(専門的には侵害刺激と言います)が加わる前に鎮痛剤を投与すると術前投与無しの場合と比べ術後の痛みが少なくなる」というものです。
この仕組みはちょっと難しい説明ですが
「侵害刺激によって誘発される脊髄神経細胞活動や疼痛関連行動が刺激の前に鎮痛剤を投与することによって抑制される。しかし、刺激の後に鎮痛剤を投与してもこれらの反応を十分に抑制することができない。このような基礎実験の結果が先制鎮痛の考え方の根拠になっています。」
注:研修医のための術後鎮痛ガイドブックより引用
これは侵害刺激によって痛みを伝えやすくするような変化(感作といいます)末梢性、中枢性におこることを鎮痛剤の術前投与が防いでいるのです。
術後の腫れについて
インプラント手術に限らず、さまざまな手術の後は創部の腫れが起ります。これは細菌の感染による腫れとは違い生体の修復過程における生理的なものなのです。
とはいえ、やはり腫れは嫌なものです。
当クリニックでは術後の腫れを抑える対策として副腎皮質ステロイド(以下 ステロイド)を術前から術後3日間服用していただいております。
ステロイドを使用している歯科医院は多くありません。
医科では頻繁に使用されていますが、一般の歯科ではあまり使われません。
しいてあげれば口内炎の治療でパッチ剤や軟膏があるくらいでしょうか。
しかし口腔外科や麻酔科ではよく使用されていて日常的な薬です。
したがってこれらの科の先生は使い方をよく知っています。
じつはこのステロイドは強力な抗炎症効果がありながら副作用もまた強い薬なのです。
使い方をよく知らないために使用をためらっている先生が多いのが現状です。
ステロイドの重要な働きは以下の3つです
1.炎症を抑えること
2.アレルギー、免疫を抑えること
3.細胞増殖を抑えること
ステロイドの副作用
1.胃潰瘍
2.ムーンフェイスとよばれる顔面の皮下脂肪の沈着
3.細菌感染に対する防御力の低下
4.骨粗鬆症
5.副腎萎縮による機能低下
などです。
具体的な投与方法はプレドニンというステロイド剤を15mg(1日3回に分けて)3日間飲んでいただきます。
この投与方法は主作用である抗炎症作用はしっかりとありますが副作用はほとんど出ません。
これにより、腫れは劇的に少なくなります。